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沈黙-サイレンス- [映画]

(2016米)原作遠藤周作。江戸時代初期の密入国者ジュゼッペ・キアラ神父の生涯。
役名はロドリゴ神父で、アンドリュー・ガーフィールドが熱演。
マーティン・スコセッシ監督の強気の2時間40分。
音楽無し、スローモーションすら無い編集。風や鳥、海、といった自然の音程度。
それで飽きさせなかった。

戦国末期には約30万の信徒がいたようだが、大弾圧となった。

師のフェレイラ神父が日本で棄教したと聞き来日を決意する。
が、当時はキリシタン禁教令下で神父の通報は銀300枚となった。

それでも神父不在だった信徒は神父の来日をミサが行えると心から喜んだ。

激しい弾圧拷問の時代だった。
塚本晋也演じる十字架上のモキチが死を迎えるに際し独唱する聖歌は胸につまる。

筑後守でキリシタン禁教政策の中心人物である井上政重をイッセー尾形が演じるが、
妙な「非寛容」で拷問を実行する。
映画では説明しなかったが、キリシタン大名蒲生氏郷の家来で自分もキリシタンだった。その井上が、幕府の人間としてどういう「さじ加減」で弾圧をしていったのかが、
一つの見どころでもある。

この時代の宗教政策と井上政重の研究は面白いのかもしれません。

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とはいうものの、蒲生氏郷家来説は、ミカエル・ジュタイシェン説。
氏郷は1595年に死去しており、1585年に生まれた政重とは考えにくい。

父井上清秀は織田信長家臣の佐久間信盛に仕え、その後、家康配下の大須賀康高に仕えることとなった。
が、面白いのは、実は清秀は、家康の祖父清康を誤って殺した阿部正豊の父阿部定吉の側室の子、つまり異母兄弟だった。

とはいうものの、正豊も即座に殺されており、家康の父広忠は許している。
そして、定吉の死去後、側室星合氏は懐妊したまま井上清宗に嫁ぎ、清秀を産んだ。

当然、このような経緯で1585年に誕生した政重が、蒲生氏郷の家来だったとは考えにくい。

母が2代将軍秀忠の乳母で、兄正就が1622年に老中となる程の距離である。

4男で比較的自由だったから潜入捜査をしたのか、興味本位からはじまったのか、
洗礼を受けたかは不明だが、理解を深めたのは事実だろう。
あるいは、調査目的での洗礼の承認を秀忠から得たのやもしれない。

が、旧新約聖書の存在も知っており、手に入れ、読んでいたのでしょう。
17世紀前半の海外事情も詳しく知ろうとしている。
当然、彼は明確にカトリックとプロテスタントを意識している。
オランダ人と接する上でも相手の論理を把握しなければならない。
また、積極的に理解しようともしているし、西洋品に夢中だった。

実は、彼が元祖無教会主義キリスト教徒だったのやもしれません。

(参考)

井上筑後守政重の海外知識について 長谷川一夫
http://repo.lib.hosei.ac.jp/bitstream/10114/10126/1/shigaku_21_hasegawa.pdf

遠藤周作『沈黙』の研究 -日本的精神風土の象徴:井上筑後守について- 陳華
http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10069/28641/1/bunkanken1_15.pdf


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8月12日の↓投稿に追加
http://1rin.blog.so-net.ne.jp/2017-08-12


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