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わが命つきるとも [映画]

(1966英)16世紀、英国教会を設立したヘンリ8世治世下、離婚問題に「NO」を貫き処刑されたトマス・モアを描いた作品。アカデミー主要5部門で受賞。

が、真面目な映画で、アクションもラブシーンも戦闘シーンも無い。
おまけに、アン・ブーリンのセリフが無い。
(ここに、作品の強い意思が表れている)

が見所は多い。トマス・モアとヘンリ8世の口論のシーン。
男児を得てチューダー朝を継続させるための離婚を認めるか否かで、
王は激昂する。それでもモアは動じない。

ルター派も存在しカトリックの腐敗も周知となり承知した上でも尚、
彼は、「法といえども、神の意思に背くことはできない。」
と自分の意思を貫いた。

立派だとしか言いようがないですね。
他の作品でモアはバカな奴扱いだったのですが、
彼を主人公とすると、まったく逆の評価となる。
鑑賞後、少し考えてから、「見てよかった」と思える作品だと思いますね。

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さすがオスカー、これぞ映画という作品でした。

コモンローと(エクイティー)衡平法という二元法体系の英国で、
モアは大法官でありエクイティー裁判所の長官でもあったそうだ。

で、ヘンリー8世の「自己中」の制定法を許すわけにはいかなかったようだ。

が、約1500年の教会権威から独立したヘンリー8世の「決断」は
単なる自己中からの蛮勇ではなく、大陸法の研究所を作って制定法を導入しようとした理知的な「判断」でもあった。

1534年の国王至上法で英国の教会トップになったが、
それを「かまわない」と判断する「知性」を持っていた。

モアは、単なる離婚に意地になって反対したのではなく、
「最高の知性」であるヘンリー8世に抵抗し殉教し「誇り」を残す決断をした。
リスペクトしなければならない。


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わが命つきるとも [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
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海と毒薬 [映画]

(1986日)30年前だが白黒。遠藤周作の小説の映画化。
1945年の「九州大学生体解剖事件」を扱っている。

5月、撃墜したB29から落下傘降下で助かった9人の内、機長は東京に行ったが、
捕虜収容所の定員オーバーのため、8人は西部軍司令部の預かりとなった。

本来、民間人虐殺を行った米兵であれ裁判を経て銃殺しなければならないが、
生体解剖することとなった。

非情に重いテーマであるが、渡辺謙と奥田瑛二が爽やかに演じているので、
モノクロといえども、昭和20年の血だらけの現実でさえ粋な作品となっている。

神なき日本人の倫理は「バレなければいい」「どうせ銃殺だから」「医学の進歩に役に立つ」で正当化される。

アメリカの戦争犯罪もある。「相殺」は政治的な事柄なので、
ここでは遠藤の設定したテーマで「罪」を考えるべきなのでしょう。

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米兵にメス、戦犯助教授の苦悩語る 九大生体解剖事件で講演
http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20160731000018

↑の記事から軍の強制性が明らかとなった。
「軍が怖かった。軍の圧力は頂点に達していた。何が正しく何が間違っていたか判断できなかった」

慰安婦問題で語られる軍とは違い、サイテーだ。

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海と毒薬 デラックス版 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: パイオニアLDC
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氷点 [映画]

(1966日)原作三浦綾子の小説。日本・韓国・台湾で何度もリメイクされている。
この1966年版は97分と短い。

私が名を知っていたのは、津川雅彦、森光子だけだった。モノクロ。
日本テレビの落語番組の「笑点」はこの『氷点』が起源だそうだ。

ドロドロの内容。

妻の不倫中に娘が亡くなったことで、次に養女を迎える際、
夫が復讐の為、妻に秘密で犯人の娘を引き取る手配をした。

妻子は何も知らずに時間が経つが、やがてバレて、シャレにならなくなる。

妻役の若尾文子の嫌な女ぷりにウケてました。
深いテーマなのでしょうが、何も考えず面白く鑑賞しました。

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ある牧師との会話で、私は、
三浦綾子の旦那が三浦朱門だと、曽野綾子とミスったことがあった。

ここで教養がバレた。

二度と間違いが起こらないよう、作品に当たることにした。

それが動機でした。

その時は恥ずかしいとは思わなかったが、その事自体、恥ずかしいことだ。

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氷点 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2015
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ディバイナー 戦禍に光を求めて [映画]


(2014豪米)ラッセル・クロウ主演・初監督作品。

第1次大戦で息子3人がトルコの「ガリポリの戦」に参戦したが帰ってこなかった。
父はオーストラリアから単身でイスタンブールに向かった。その実話。

ラッセル・クロウ自身がオーストラリア出身でもあり、
この父のことをどうしても作品にしたかったのでしょう。

現地に向かい、トルコの軍人ハーサン少佐に協力してもらう。
彼と共に危険地帯へ行くも、ギリシャ人が機関銃で襲い掛かってきた。
身の危険が何度もありながらも、彼は諦めなかった。

ラッセル・クロウの熱い気持ちが込められていた。
脚本もよかった。プロの評価は割れるかもしれないが、私はよかった。

私生活が短期で粗暴らしいが、作品の主人公に目頭が熱くなりそうだった。

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毎週まじめに教会に通ってた妻が自殺した。
3人の息子を戦場に送り帰ってこなかった。

第1次大戦なのでこの母だけのことではないが、酷だった。
その3人を戦場に送った責任を父が問われるが、それも酷だった。

天涯孤独となった父が息子を探す旅に出て、神が味方したかのように
数々の危険を突破していった。

起ってしまったことはどうしようもない。
ただ、この父のように、死を恐れずに続けるべきなのでしょう。

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ディバイナー 戦禍に光を求めて [DVD]

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ジャンヌ・ダルク [映画]

(1999仏米)ジャンヌ・ダルクを否定的に描いた作品。リュック・ベッソン監督。

ジャンヌの脳内世界を勝手に想像して描くのであるが、検証しようがない。
シャルル7世の戴冠式を実現させたことで、私は、オルレアン解放は神の介入だったと考えようと思うが、
この作品は否定したいようだ。
同時に当時の教会の頑迷さも描いてはいるが。

凶暴な純愛を描いた『レオン』と同様、兄弟を殺された少女の力を信じるのでしょう。
が、監督は人間の超人的な復讐劇に神がいるのが許せないのかもしれません。
監督の見方なのでしょう。

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幼い頃、教会大好き少女だったジャンヌは1日に3度も告解を強要し
さすがに神父に呆れられる。
そんなジャンヌが勝手に教会の聖杯を飲んでしまうシーンがある。
それで魔的なパワーが宿ってしまうが、
それほど監督はスピリチュアル的な感性があるのなら、
ジャンヌを肯定的に考えることもできたはずなのでしょう。

『LUCY/ルーシー 』もバイオレンス少女であり、
『トランスポーター』シリーズの女たちも似たような線。

ある「好み」を抱くのはいいが、その線で「聖人」を表現するのは、
精神衛生的によろしくないと思うのですがね。
中盤までは面白かったですね。

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ジャンヌ・ダルク [DVD]

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冬のライオン [映画]

(1968英)プランタジネット朝ヘンリー2世が、1183年のクリスマスに家族を集めて王位継承を決めるドタバタ史劇。

1966年のブロードウェイ演劇作品の映画化で、その後もリメイクされる作品だそうだ。

元々はアンジュー伯だった主人公ヘンリーは、イングランド国王となる。
王妃は、アキテーヌ公の娘エレノアで、かつてフランス王の妻でもあった。
この夫婦に3人の息子が登場し、かつ愛人アリースと19歳のフランス国王フィリップも加わる。

その人間関係を少し調べて鑑賞したので、私はかなり面白かった。
ヘンリーとエレノアが大喧嘩し罵りあい、子も自分が王にならなければ、
不遇か場合によれば死なので、フランス王フィリップと組んで反乱を企てもする。

たった1日の出来事を2時間超で描写し観客を笑わせる。
見どころは、長いセリフで本気の夫婦喧嘩をする役者の力量なのでしょう。

歴史の勉強のつもりでしたが、完全な娯楽でした。

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ヘンリー2世も愛人と結婚するために、妻との婚姻の無効を教皇に認めてもらおうとした。
英国教会はヘンリー8世の離婚問題という私的な動機からの出発だった。
王だから教皇に「お願い」にいけたが、普通は無理だろう。

2人とも不純な私的動機だが、そもそも離婚を厳格に認めないとするのも、
私的な領域に対して縛りすぎでしょうね。

が、同性愛の問題にしろ、カトリックの保守的な考え方が無くなると、
人類にとっても道徳的損失となると思いますね。
どうしても嫌なら改宗すればいい時代ではある。

保守的な勢力が一定数いてくれる方が全体にとっては健全だと思いますね。

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THE LION IN WINTER 冬のライオン 前編 [DVD]

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ブラック・スキャンダル [映画]

(2015米)犯罪映画。ノンフィクション。
マサチューセッツ州ボストン南部の犯罪組織のボス、ジミーが主人公。
彼の弟が州上院議長まで務めた政治家で、幼馴染コノリーはFBIだった。

ジミーが敵の情報をコノリーに与え逮捕。両者の益となった。
が、最後に自分も逮捕となる。
実話なだけに私は面白かった。フィクションなら退屈かもしれない。

貧しい街で育った3人の絆は固い。
が、政治家の弟をカンバーバッチが演じていたが、犯罪には絡んでおらず、
作品に華を添えた役柄。
しかし、聖パトリックの祝日を喜ぶアイルランド系の3人の姿は、アメリカ社会の重層を描くに印象的だった。

ジミーは後半生、北アイルランド紛争を支援する。
殺人を繰り返し、教会に足を運んだようだが、、。
ジョニーデップの演技は、知性と冷酷、優しさを兼ね備え、恐ろしい。

ビン・ラディンの1位を奪うことはできなかったが、FBI最重要指名手配2位だったそうだ。

作品の好みは割れるでしょうね。
弟の政治家になるエピソード、犯罪で得た兄の金銭的支援が無かったのなら無いで、
苦労話を入れてほしかったですね。

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大人になってどういう道を選ぶにしろ、
子どもの時に通った教会や施設、その行事に懐かしさや思い出は残る。

「思い出」や信仰を守るために自分の人生や生命を懸けることそのこと自体は尊いことです。
これは宗派教派関係ないことで、むしろ、「そのような者はいない」と言う方が恥ずかしいことでしょう。

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10日前の↓投稿に追加しました。
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ブラック・スキャンダル ブルーレイ&DVDセット(初回仕様/2枚組/デジタルコピー付) [Blu-ray]

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アメイジング・グレイス [映画]

(2006英)イギリスの政治家ウィリアム・ウィルバーフォースの伝記映画。
主人公は、18世紀末からの奴隷廃止運動の第一人者で、議会で最初に言い出した。
彼が出会った牧師の一人は、賛美歌「アメイジング・グレース」の作詞者で、その牧師は奴隷船で2万人を運んだ船長だった。

この作品は、1780年頃からはじまり、アメリカがフランスの支援で独立したてで、20代前半でケンブリッジからの友人ウィリアム・ピットと世界を眺めイギリスを自分たちで変えることを確信したシーンからはじまる。

1783年ピットが24歳で首相となり彼を支える。1833年に他界するまでの半世紀を奴隷制廃止に捧げた。

1789年にはフランスで革命が起こり、1793年に対仏戦争となる。
奴隷解放というリベラルな運動は、革命運動と同一視され危険視されてしまう。
双方は全く違う目的ではあっても、この時代の人々の冷静には考えてくれない描写は酷だった。

様々な抵抗があったが、1807年、奴隷貿易廃止法案を283対16で可決させる。
ウィルバーフォースに賛辞が贈られるクライマックスは、見事だった。

俳優はピット役のカンバーバッチしか知らなかったが、その彼を脇にした主人公のヨアン・グリフィズも清廉と情熱、堂々たる言動。

ラスト、民族衣装での「アメイジング・グレイス」は感無量でした。
イギリス映画3本選ぶなら、コレでしょう。

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この曲を何十回と聴いたのですが、知りませんでした。
これほどまでの深い悔悟があって、牧師となった。
ある教会で『アメイジング・グレイス』が歌われていても、
私は意味を知らずに謡っていました。

この曲でなくても賛美歌の生まれた背後にとてつもない重い十字架が
あるのやもしれません。

神さまを賛美する以上、俗的な恋愛や不倫が主題ではなく、
「罪」や「死」がメインとなるのでしょうね。

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アメイジング・グレイス [DVD]

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エリザベス:ゴールデン・エイジ [映画]

(2007英)続編。異母姉のメアリー女王の死去する1558年からスペインとのアルマダの海戦の1588年までの約30年間だが、数年の出来事のように終わる。

時間の経過を説明するテロップがあれば、重厚な大河ドラマ風になったのでしょう。

物語は、外交上の縁談話と、スペインとの戦いで艦隊司令官を務めたフランシス・ドレークとの交流がメイン。

そこに、スコットランドの女王だったメアリーとスペイン王家とカトリックがエリザベス暗殺を目論み、バレてメアリーが処刑されるシーンとなる。

艦隊決戦は、長ければダレるし短かければ作品が軽くなる。
難しいところなのでしょうが、アッサリ勝った感で終わる。

2作品を鑑賞してよかったですが、中高生も対象にしているのか、少女マンガ風ではありました。
歴史の勉強にはGoodなのでしょう。

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1558年に女王となり、1559年に父ヘンリー8世の首長法を再度制定し国教会の長となる。
同年に、統一法で礼拝方式を定めている。26歳頃にやってのけた。

兄や姉もいて、庶子だったので女王になる英才教育を受けた訳ではないが、
信仰と立場がそうさせたのでしょう。

ローマやスペインから独立を守ったが、
海賊行為を認め、それでも神に許されると認識していた。

この国教会というのは王権を支える存在として機能しており、
非国教徒は後に1673年の審査法で公職に就けなくなる。

教義はプロテスタントでも、存在形態は違いすぎますね。


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エリザベス : ゴールデン・エイジ [DVD]

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  • メディア: DVD



クロムウェル [映画]

(1970英)17世紀ド真ん中、清教徒革命の頃のイギリスを視覚で見たことなかった。
この激動期が、ロックやモンテスキューを産んだのでしょう。
その時代を学ぶ映画作品として、最適だと思いますね。

議会派クロムウェル 対 王党派チャールズ1世 を軸とする。

当初、議会での演説にて支持を集めるが、あくまで人民の代表者としてであり、
独裁を望んではいなかったようだ。王に推挙されるも、断固拒否だった。
王の処刑に署名した共和主義者が王になるのは喜劇でありクロムウェルもさすがに恥を知っていた。

この作品では、彼の護国卿として独裁を振るう外交シーンや住民虐殺のシーンがない。
美化はしていないが、負の面を排除したのでしょう。
彼は王政復古後に死体を晒されたようだが、そういうシーンもない。
あくまで彼の輝かしい足跡を残す。

チャールズ1世を演じてたアレック・ギネスが、『アラビアのロレンス』でのファイサル王子とは演じ分けていたので、大俳優だったのだろうと感嘆する。
戦場は大草原での数百人を動員しての撮影でCGではない生の迫力は、
さすが、アメリカ映画でもないイギリスの重厚な気位を感じさせ見応えありました。

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カトリックの礼拝形式を嫌ったクロムウェルだが、王制を廃し、
自分が護国卿となり軍権を握ると、カトリックやプロテスタントといった宗教の次元ではなく、
リアルな政治的な次元で考えるのでしょうね。

清教徒は分離派、長老派、独立派とあるようで、長老派の王との妥協姿勢が許せなかった。
確かに、この作品での長老派は無節操・無原則だった。
結局、共和制独裁者が王制に勝ると証明した訳ではなかった、ということでしょうね。

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クロムウェル [DVD]

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